私がコンサルタントとして独立した頃の話です。
保険代理店の方の勉強会で講演をさせていただきました。
参加されている方から、後日連絡があり、顧客管理をもっときっちりしたいとのご相談でした。
そこで、訪問させていただき、現状の顧客管理の状況を確認しました。
やはり、予測した通り、顧客管理はほとんどされていない状況でした。
つまり、契約時のデータがそのまま残っているだけです。
そこで、この顧客はいつから契約して顧客管理期間は何年なのか?
ロイヤルカスタマーかどうか、新規顧客かどうか?
どのようにして顧客になったのか?
などの個々の顧客との関係性を把握するためのデータベースを新たに作ることをアドバイスしました。
しかしながら、結果的にはデータベースを作ることはなかったのです。
どうしてでしょうか?
その方が最も懸念していたのが、データベースを新たに作ることは二重管理になるのではないのか?ということです。
エクセルで契約書が作られるのですが、それとは別に同じ情報を新しいデータベースに入力することが面倒というわけです。
この問題は、他社でも結構あります。
私がコンサルティングしていたある中小企業は歴史が古く、数十年前に数千万円の費用をかけた基幹システムで顧客情報を管理していました。
私はその基幹システムのデータを拝見させていただきましたが、基幹システム自体は契約時の情報などがあるだけでした。
売上情報はありますが、請求書を発行したり、経理的な売上管理のための情報で顧客との関係性を把握するものはありませんでした。
そこで、マーケティングのための新しいデータベースの作成を提案しました。
実際に、データベース作成を始めてみると、重複している顧客や支店や営業所などのグループ化ができていないので、顧客ごとの売上がわからない状況でした。
結局は高額な費用をかけて作った基幹システムだけで管理するという結論になりました。
二重で管理することは、誰が管理するのか、誰がメンテナンスするのか?などの問題があり、やはり非効率と判断されたようです。
顧客との関係性を把握して、適切な顧客に適切な情報提供をすれば売上が増えることは想像に難くないでしょう。
しかし、それをしないのは単に面倒だからというキーワードで片付けてしまうので、何も変わらないです。
簡単に面倒なく、売上を増やす魔法の杖はありません。
必要なことを粛々とやる。これが結局は早道です。
そして、顧客にとっても良いことになるのです。
本当に顧客のことを考えるなら、面倒でも必要なことはしないといけないのです。

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